抄録
肝硬変症を主とする慢性肝疾患患者14例にWAIS成人知能検査,記号追跡試験(Trail Making Test)を施行し,その成績と意識障害既往,脳波異常,肝機能検査成績との関係をみた.肝疾患患者群はWAIS動作性検査成績で低下を示した.意識障害既往,脳波異常,肝機能代償不全などを有する群では,それらのない群に比べて,WAISとくに動作性検査での低下がみられた.
記号追跡試験においては,Part I 73, Part II 169, Part I+II 242に線を引くと,上述のそれぞれの2群をよく弁別できた.慢性肝疾患患者のうち,とくに脳波異常,肝機能不全のあるものは,psychometryの成績からいえば,脳機能不全の準備状態にあるということができる.