抄録
Shwartzman反応(シ反応と略す)は当初実験的に家兎で作られた現象であるが,人体における症例にもこれと共通の所見が得られ,特に臨床上激症肝炎とされた症例の病理解剖学的所見の一部にはシ反応と関係づけて解釈できうる要素があることが指摘されている.一方,肝炎が妊娠時セミは重症になり易いという事実は既におおむね認められており,これに関連して妊婦の重症肝障害に関する報告も多い.
以上の如き背景の下に,今回,妊娠家兎の肝臓に大腸菌の内毒素を注入し,それによって肝臓を主座とするシ反応を起し,その模様を非妊娠家兎の場合と種々比較検討することによって所謂妊婦肝炎の激症化についての機序解明を試みた.その結果,シ反応による急性肝組織壊死は,妊娠時には非妊娠時に比して遙かに起り易く,特に分娩の前後には起り易いことが示され,しかもこれらには妊娠時の重症肝炎の特長とされる脂肪変性の強い肝組織変化の像を稀ならず再現し得た.
妊婦はシ反応の準備状態にあるとされている事実をふまえ,以上の結果から,ヒトにおける妊婦肝炎の激症化の原因も少くともその一部はシ反応の関与によるものではなかろうかという可能性を強く指摘したい.