日本周産期・新生児医学会雑誌
Online ISSN : 2435-4996
Print ISSN : 1348-964X
教育講演
地域周産期医療から見た遠隔診療の在り方~モデル事業の提示~
古川 誠志
著者情報
ジャーナル フリー

2022 年 57 巻 4 号 p. 603-605

詳細
抄録

 胎児心拍数モニタリング共同監視システムの導入まで

 胎児の低酸素事象による予後不良例はいまだに多い.宮崎県のデータでは,正期産児の脳障害の原因の33%は低酸素事象で(図1),しかもその半数は分娩中の低酸素事象である1).分娩中の低酸素事象の診断には胎児心拍数モニタリングを用いるが,その判読が不適切であれば治療介入が遅れるために予後不良例が生じうる.宮崎県ではローリスク分娩の8割は産科診療所で行われているため,県全域の低酸素事象による周産期予後を改善するには産科診療所に対する胎児心拍数モニタリングの判読支援が必要だった.そこで宮崎県では地域の産科診療所と地域周産期センターとの間をVPN回線で結び,産科診療所における胎児心拍数モニターをリアルタイムに地域周産期センターでも監視できるようにし,異常胎児心拍数パターンの有無を双方でチェックし,適切なタイミングで分娩させるシステムを構築した(胎児心拍数モニタリング共同監視事業:図2).事業化の資金は医療介護総合確保促進法に基づく宮崎県の医療計画の補助金等を利用した.

著者関連情報
© 2022 日本周産期・新生児医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top