肝臓
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膜様物形成によるBudd-Chiari症候群と原発性肝癌を合併した1剖検例
杉本 立甫森田 宣人水木 正雄小林 健一安念 有声
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1976 年 17 巻 6 号 p. 472-477

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抄録
われわれは原発性肝癌と下大静脈閉塞症候群を合併した1剖検例を経験したので報告する.症例は52歳女性で昭和50年3月中旬より全身倦怠と浮腫が出現したため3月31日に当科に入院した.入院時黄疸・貧血はなく,心・肺の理学的所見で心濁音界の拡大以外に異常なく,腹水が著明であり,腹壁に静脈怒脹を認め,下肢に浮腫を認めた.検査成績でGOT 124, GPT 56, al-pase 29.5 (K.A.), LDH 753, BSP 30%, ZTT 15.5, TTT 5.8, HBsAg (+), α1-f (+)であり,血管撮影にて肝癌と肝静脈から下大静脈の閉塞と診断した.入院後利尿薬の投与を行なったが6月2日肝不全で死亡した.剖検では黄色の腹水2700ml,肝は重量2750gでほぼ全体が腫瘍であり,肝硬変を伴ったEdmoudson分類II型の肝癌であった.また肝静脈流入部よりやや上方で下大静脈は膜様物にて完全に閉塞されていた.膜様物に右房側より線維が連続的に入り込んでいたことより先天性の形成異常に肝癌が合併したものと考えた.
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© 社団法人 日本肝臓学会
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