肝臓
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肝硬変症における肝動脈系の組織計測的解析
手塚 文明高橋 徹
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1978 年 19 巻 6 号 p. 547-555

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抄録

剖検材料の肝動脈系に組織計測的解析を加え,硬変肝における肝動脈循環の機能的意義について検討した.肝臓の動脈血流量Qは固有肝動脈の解剖学的半径Rから推定が可能でQ=k"・Rnの式を用いて計算した.但しk"は定数,nは加齢とともに増加する関係である.推定の結果,硬変肝のQは著しい増加を示すものから正常範囲にとどまるものまで症例による差が極めて大きかった.ところでQと間質量との間には有意の正相関が成立し,これに対しQの大小は実質量と無関係である.硬変肝の間質はGlisson鞘と肝静脈枝とを結びつける短絡路を含み,間質量の多い硬変肝はそれだけ豊富な肝内短絡床を有するから,肝動脈循環量の増加は肝内短絡形成の結果と解釈された.したがってそれは,門脈循環の阻害を代償し再生結節を栄養するといった合目的性をもつものとは考えにくい.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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