肝臓
Online ISSN : 1881-3593
Print ISSN : 0451-4203
ISSN-L : 0451-4203
肝細胞細胞質中にも封入体を認めたヘルペス肝炎の一例
内田 俊和下田 敏彦志方 俊夫大塚 昇
著者情報
ジャーナル フリー

1979 年 20 巻 5 号 p. 499-510

詳細
抄録

9歳男児で,腹痛と全身の水痘様皮疹を訴えわずか3日間で死亡したヘルペスウイルスの全身播種の一症例.剖検によりウイルス封入体が肝臓(肝細胞, Kupffer細胞)をはじめ脾臓(細網細胞,血管内皮細胞)食道(扁平上皮細胞)肺(肺胞上皮細胞)骨髄(細網細胞,巨核球)リンパ節(細網細胞,リンパ球)に多数認められ,組織の巣状壊死を伴なっていた.臨床症状からその成因として水痘-帯状疱疹ウイルスが最も疑われたが,単純性疱疹ウイルスの可能性もありえる.本症例は肉眼的に胸腺を欠如し,リンパ節は低形成,白脾髄のリンパ球の著減・全身の形質細胞の著減などから素因として免疫不全があったことがうかがわれた.ウイルス封入体の広範な分布,及び肝細胞や食道上皮細胞では核内のみならず細胞質内にも封入体が認められたことが特異的であった.また出血傾向の合併はウイルスの巨核球感染によるものと思われる.

著者関連情報
© 社団法人 日本肝臓学会
前の記事 次の記事
feedback
Top