1980 年 21 巻 1 号 p. 49-54
3年間に3回強い掻痒を伴う黄疸発作を繰り返した,良性反復性肝内胆汁うっ滞症(benign recurrent intrahepatic cholestasis)を経験した.本症に合併症の報告は少ないが,本例では,黄疸発作期に限り,二次性糖尿病となり,インスリン治療を要した.
発黄極期の肝は,小葉中心性の胆汁栓が目立つが,肝細胞内の胆汁沈着は少なく,肝細胞壊死,炎症性細胞浸潤はほとんど認めなかった.グ鞘には,軽度の小円形細胞浸潤を認める.いずれの病期においても,胆管の増生,変性や,線維増生はなかった.
黄疸期の電顕では,毛細胆管の数の増加が著明で,内腔に胆汁物質の充満が見られた.一方,肝細胞内に胆汁うっ滞を欠く事は,電顕レベルでも確認された.