肝臓
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肝細胞の空胞変性の発生機序
類洞圧上昇の原因的意義
芝山 雄老松本 和基斉藤 雅文中田 勝次
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1980 年 21 巻 10 号 p. 1283-1294

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抄録

肝細胞は低酸素に極めてvulnerableであり,空胞変性は低酸素による最も初期の光顕的変化で,それが小葉中心帯に好発する理由は周辺帯よりも中心帯がより低酸素状態になるためであると信じられている.著者は肝細胞の空胞変性がいかなる条件下で発生するかを摘出肝潅流実験で検討した.その結果,低酸素血で5時間以上潅流しても肝機能(胆汁産生量・酸素消費量)が低下するのみで空胞変性は発生しなかった.一方,高酸素血で潅流しながら下大静脈圧を60~70mmH2Oに上昇させると小葉中心帯の肝細胞に空胞変性が発生し,さらに圧を上昇させると小葉周辺帯の肝細胞にも発生してきた.また,160mmH2O以上の門脈圧で潅流すると小葉周辺帯の肝細胞に空胞変性が発生した.以上の実験成績より,肝細胞の空胞変性の発生には類洞内圧上昇が重要であり,低酸素血症はその直接的原因ではないと結論した.空胞変性が小葉中心帯に好発する理由は同部のcritical sinusoidal pressureが周辺帯のそれよりも低いためと考えられた.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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