1980 年 21 巻 12 号 p. 1682-1689
血中アンモニアが規則的な日内変動を示す48歳の男性が,血清アミノ酸分析及び尿素サイクル酵素定量より成人型シトルリン血症と診断された.1日蛋白量を50g以下に制限し,lactulose 30ml~40mlを1週間に及んで投与したが,アンモニアの改善はみられなかった.次に従来,肝性昏睡治療薬として用いられてきた4種のアミノ酸製剤の効果を比較検討した.glutamateとarginineの合剤とglutamateの単剤がほぼ同等のアンモニア下降作用を示したことより,glutamateが有効であることが分った.一方,citrateの経口投与もglutamateの静注とほぼ同等の効果を表わした.citrate投与2時間後の血清アミノ酸分析ではglutamateが増加し,citrullineが低下していた.以上の事実より,citrate→α-ketoglutarate→glutamate→glutamineの反応系が血中遊離アンモニアの処理に有効に関与していることが示唆された.