肝臓
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ヒト肝癌のヌードマウスへの移植に関する研究
可移植系の樹立とその性格
桑原 武彦
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1980 年 21 巻 3 号 p. 303-315

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抄録

肝癌14症例から15個の組織片を採取し,ヌードマウスに移植を試み,6例の継代移植に成功した.しかしそのうち,5代以上継代され,生着率100%をしめしたものは肝細胞癌の一系統(Hc-4)のみであり,現在継代12代を越えている.この腫瘍は移植後潜伏期10日を経過してから,半対数グラフ上で直線的に増殖し,4週後には300~600mm3に達した.Doubing timeは5日であった.AFPは,生着した6系統では全例がマウス血清より検出された.
継代移植腫瘍は組織学的に原腫瘍に類似しているが,間質の発達が非常に弱く,胞巣形成が著明でなかった.また,Hc-4腫瘍は血清吸収試験,抗ヒトAFP血清による沈降反応,核型分析よりヒト由来のものであることが同定された.
以上,Hc-4腫瘍は肝癌の生物学的特性や種々の治療効果の研究に有用であるとおもわれる.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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