肝臓
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特発性門脈圧亢進症肝の病理学的ならびに組織計測的研究
相田 尚文
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1981 年 22 巻 5 号 p. 656-676

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抄録
特発性門脈圧亢進症(IPH)の剖検肝14例,外科的生検肝13例ならびに正常剖検肝3例を検索対象とし,病理形態学的,組織計測的研究を行った.特に剖検肝は前額断大割切片の全面にわたる検索を系統的に行った.得られた結果は以下の如くである.1)IPH剖検肝の肉眼的特徴を総括的に報告した.2)面積によって4つに区分した肝内門脈域の病理組織学的変化を系統的に記載した.そして,従来著変をみないとされていた肝静脈系にもかなりの変化がみられる事を指摘した.3)IPH肝の門脈域およびそこに存する各脈管系のそれぞれの面積を多数の部位についてpoint counting法により測定し,IPH肝の肝内門脈枝の狭小化・潰れが少くとも第5次前後の門脈枝より末梢域で認められる事を明らかにした.そして,IPH肝病変の主座は最末梢門脈域にあると推論した.4)蛍光X線分析により肝組織内微量元素の測定を行ったがIPHに特徴的な有意な成績は得られなかった.5)IPH肝では肉眼的,組織学的,更には組織計測的にも肝内病変の分布と程度が均一でない事が確かめられた.そして,病変分布と程度の不均一性はIPH肝の特徴的所見の一つと考えられた.
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© 社団法人 日本肝臓学会
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