肝臓
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各種肝疾患における肝組織内HBs抗原の分布様式について
日野 邦彦藤倉 覚富田 純子宮川 浩岩崎 政明高橋 淳
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1982 年 23 巻 1 号 p. 15-22

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抄録

Victoria blue染色法を用いて,血中HBs抗原持続陽性例63例の肝組織内HBs抗原の分布様式と肝病変との関連性を検討した.
散在型の分布を示すものは,AsCやCIHに多く,各種肝機能検査成績は低値を示し,組織学的にも肝細胞壊死像や線維化の程度は極めて軽度であった.単細胞孤立型を示した症例は,全例慢性肝炎で非活動性に比較して活動性が多く,transaminaseは高値であった.組織学的には,壊死像の著明なものが多く認められた.小葉型の分布は,LCの大部分とCAHの一部で膠質反応やγ-gl.が高値であり,組織学的に線維化の高度なものが多かった.また,巣状型を示したものは,単細胞孤立型と小葉型の中間像を呈した.
散在型や単細胞孤立型の血中HBs抗原力価は高く,巣状型や小葉型では,低い傾向を認めた.
散在型を示すものは,eAg及びeAb持続陽性例に多く,単細胞孤立型は,seroconversion例が多かった.巣状型や小葉型では,eAg持続陽性例はなく,特に後者では,eAb持続陽性例が多かった.
2回以上肝生検を施行し得た10例のs-GPTの推移と肝組織内HBs抗原の分布様式の経時的変動を観察した.単細胞孤立型が続くものではs-GPTの著しい上昇がみられ,巣状型や小葉型へと移行するものでは,s-GPTが安定したが,一部の症例で肝硬変への進展が認められた.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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