1982 年 23 巻 1 号 p. 72-76
Sjogren症候群を合併した無症候性原発性胆汁性肝硬変に,手指硬化症,Raynaud症状,食道の拡張と運動性の低下,両側指尖部の末梢血管拡張を特徴とする不全型CREST症候群の合併が認められた1例を報告する.症例は60歳女性で,冬期のRaynaud症状を主訴とし,さらに検診で肝機能障害を指摘され来院した.IgM 427mg/dlと抗ミトコンドリア抗体1,280倍陽性が認められ,開腹肝生検にて典型的な非化膿性破壊性胆管炎(Scheuer分類Stage II)の所見が証明された.経過中,Sjogren症候群の合併が確認された.さらに両側手背部の皮膚の浮腫,硬化,発赤,色素沈着が出現したので,手指硬化症を疑い,皮膚生検を施行したところ,皮膚組織像では膠原線維の著明な増加は認められなかったが,炎症細胞の浸潤と異物型巨細胞を伴う肉芽腫を認めた.また指尖部の毛細血管拡張と食道の拡張も認められ,calcinosisを伴わない不全型CREST症候群と考えられた.