1982 年 23 巻 4 号 p. 372-378
HBs抗原持続陽性者246例を対象とした.これを,A:無症候性HBs抗原持続陽性者(ASC), B:初めて肝機能障害を指摘されたもの,C:肝疾患患者,の3群に分けて検討し,さらに,42家族97名について家族内調査を行った.B群では,肝機能検査の1項目だけに異常を示したものが57.7%を占め,この異常はGOT, GPT, ICGに多く,ASCからの発症は潜行性に起り,徐々に慢性化するものと推測された.家族内HBs抗原陽性率はC群の家族で高く,しかも,配偶者より血族者で高率であった.組織学的にみても,血族者内にHBs抗原陽性者が存在する発端者では肝硬変,肝癌が45.5%を占め,肝病変の進展も急速であったのに対し,存在しない発端者では肝硬変は5.3%にすぎず,その差は有意(p<0.05)であった.これらの結果から,B型肝炎の発症と肝病変の進展に,遺伝的因子の関与が示唆された.