肝臓
Online ISSN : 1881-3593
Print ISSN : 0451-4203
ISSN-L : 0451-4203
HBs抗原持続陽性者の病態と予後に関する研究
特に発端症例の病態と家族内HBs抗原抗体調査成績との関連について
南部 勝司上山 洋今井 康允和田 偉将崎田 隆一森川 綾子佐久間 光史前田 裕高原 義真弓 忠津田 文男浪久 利彦上田 英雄
著者情報
ジャーナル フリー

1982 年 23 巻 4 号 p. 372-378

詳細
抄録

HBs抗原持続陽性者246例を対象とした.これを,A:無症候性HBs抗原持続陽性者(ASC), B:初めて肝機能障害を指摘されたもの,C:肝疾患患者,の3群に分けて検討し,さらに,42家族97名について家族内調査を行った.B群では,肝機能検査の1項目だけに異常を示したものが57.7%を占め,この異常はGOT, GPT, ICGに多く,ASCからの発症は潜行性に起り,徐々に慢性化するものと推測された.家族内HBs抗原陽性率はC群の家族で高く,しかも,配偶者より血族者で高率であった.組織学的にみても,血族者内にHBs抗原陽性者が存在する発端者では肝硬変,肝癌が45.5%を占め,肝病変の進展も急速であったのに対し,存在しない発端者では肝硬変は5.3%にすぎず,その差は有意(p<0.05)であった.これらの結果から,B型肝炎の発症と肝病変の進展に,遺伝的因子の関与が示唆された.

著者関連情報
© 社団法人 日本肝臓学会
前の記事 次の記事
feedback
Top