肝臓
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高γ-グロブリン血症の時期から観察し得たルポイド型慢性肝炎の1症例
辻本 正彦苅谷 幹雄高橋 泰行溝口 靖紘
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1983 年 24 巻 3 号 p. 306-312

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抄録

1年前より高γ-グロブリン血症のみが検出され,肝障害の所見が明らかでない36歳の女性が,急性肝炎様に発症し,著明な黄疸を伴なうシューブを繰り返し約7ヵ月の経過にて亜急性肝萎縮を呈するに至った.経過中抗核抗体,抗平滑筋抗体等自己抗体の出現を認め,HB抗原,抗体は陰性で,肝特異抗原に対するリンパ球幼若化反応は強陽性,suppressor T cell機能の低下を認め,いわゆるルポイド型慢性肝炎と思われた症例を経験した.患者の実母にも高γ-グロブリン血症と高IgG血症を認めた.ルポイド型慢性肝炎の病因については,HLA等の免疫遺伝学的な面からの病因が想定されており,本症例は急性発症以前に高γ-グロブリン血症の存在する事が指摘されていた症例で,この免疫遺伝学的素因の存在を示唆する一例と考えられた.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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