1984 年 25 巻 3 号 p. 328-338
正常者18例,各種肝疾患144例の血清コリンエステラーゼアイソザイム像を平板ディスク電気泳動法により検討した.泳動後のゲルの染色にヨウ化アセチルチオコリンを用いた場合,肝硬変,肝癌例において高率に異常バンドの出現を認めた.異常バンドはアセチルコリンエステラーゼに対する特異的阻害剤であるCaffeine, Ambenoniumで阻害されること,ヒト赤血球膜に対する抗血清(アセチルコリンエステラーゼに対する抗体を含む)と反応させると吸収されることから,アセチルコリンエステラーゼの性状を有することが明らかになった.異常バンドは腹水歴を有する肝硬変例,肝硬変合併肝癌例において特に出現頻度が高く,同一例の経時的検討から,肝硬変例では非代償期,肝癌,転移性肝癌例では病状の悪化に伴って,活性が高くなる傾向が認められた.