1985 年 26 巻 10 号 p. 1407-1412
初診時70歳の男性例の無症候性原発性胆汁性肝硬変を3年余り経過観察した.初回肝生検でScheuer分類のI期を呈し,3年後に,合併する腹部大動脈瘤の破裂により手術を受け,その際の生検所見もI期であった.1回目の肝生検所見に比し門脈域の細胞浸潤はむしろ軽減していた.肝機能検査成績やIgM値,AMA値も初診時に比し3年後には改善した.この間,合併症である慢性関節リウマチの治療を主たる目的として,プレドニンとD-ペニシラミンの投与を受けている.これら治療薬剤による肝組織所見への影響は完全には否定しえないが,無症候性原発性胆汁性肝硬変とくに高齢者の無症候性原発性胆汁性肝硬変の予後を考える上で貴重な症例と考えた.