肝臓
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無症候性HBウイルスキャリアの免疫学的研究
免疫寛容の解除に及ぼす性ホルモンの影響
池本 吉博溝口 靖紘福井 美智留加藤 寛子筒井 ひろ子新井 孝之宮島 慶治阪上 吉秀東森 俊博関 守一山本 祐夫森沢 成司
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1985 年 26 巻 5 号 p. 578-581

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抄録

著者らは先に無症候性HBウイルスキャリアの末梢血単核細胞におけるpokeweed mitogen (PWM)刺激による抗体産生の誘導が,健常ヒトのそれと異なり,女性ホルモンによって増強されないことを認めた.この無症候性HBウイルスキャリアの女性ホルモンによって増強されない免疫学的特徴を解析するため,まず免疫寛容マウスを用いて検討した.一般に無症候性HBウイルスキャリアはHBウイルスに対し寛容状態にあると考えられているので,マウスに免疫寛容状態を誘導し,寛容状態の解除にエストロゲンおよびテストステロンがどのように影響を及ぼすかについて解析した.その結果,免疫寛容状態の誘導にマウスの系統差を認めた.また,マウスに免疫寛容状態を誘導し,エストロゲンを投与すると,免疫寛容状態は部分的に解除するが,このエストロゲンの作用はテストステロン同時投与によって消失した.以上の結果は,無症候性HBウイルスキャリアの発症に,遺伝的な因子および性ホルモンが関与する可能性を示唆する.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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