経動脈的バゾプレッシン投与の門脈循環への作用を検討するために,肝硬変3例,肝癌3例,特発性門脈圧亢進症3例,慢性肝炎2例,その他1例の計12例を対象に,バゾブレッシンを持続的に上腸間膜動脈内に注入し,門脈血行動態の変化を検討した.バゾプレッシン注入により,上腸間膜静脈血流は627±213ml/min (mean±S.D.,以下同様)より308±116ml/minに,門脈血流は961±289ml/minより493±94ml/minに,門脈圧は17.8±5.2mmHgより14.7±4.6mmHgに変化し,その変化は,共に統計学的に有意であった.一方,脾静脈血流は523±393ml/minより487±451ml/minと減少したが有意とは言えず,また,症例によっては明らかに増加している症例もみられた.血中酸素含有量の測定でも同様な結果が得られた.バゾプレッシン注入にともない脾静脈血流が増加した症例があり,その意味は重要と思われた.