1988 年 29 巻 11 号 p. 1438-1444
近交系Wistarラットに同系肝抗原を免疫することにより自己免疫性肝炎モデルを作製した.この実験肝炎の発症はWistarラットで著明に発症し,Lewisラットでほとんど発症しないことからstrainによる差とみたい.肝炎ラットの肝組織内浸潤単核球をラットリンパ球に対するモノクローナル抗体を用いて免疫組織化学的に解析した.その結果,門脈域にRLyt-2陽性のcytotoxic T lymphocyteの増加を認めた.さらに,肝組織内浸潤単核球,脾細胞および末梢血単核球のflow cytometryによる解析から,肝組織内浸潤単核球および末梢血単核球においてRLyt-2陽性細胞とW3/25陽性細胞の合計と比較してRLyt-1陽性細胞の相対的減少がみられた.モノクローナル抗体の相互反応性から,肝組織内にRLyt-1陰性あるいは弱陽性のRLyt-2陽性細胞群を認めた.以上より実験的自己免疫性肝炎においてCTLが肝細胞障害に関与していると考えられた.