肝臓
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肝膵同時大量切除の研究特に脂質代謝の変動と脂肪肝の発生について
河村 勝弘
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1988 年 29 巻 11 号 p. 1451-1461

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抄録

雑種成犬を用い70%肝切除に74%以上の膵切除を併施し,術後脂質代謝の変動と,膵内分泌機能を検索した.92%以上膵切除単独群では,術後早期より膵のインスリン及びグルカゴン分泌は著明に低下して全例に糖尿病が発現し,高脂血症並びに脂肪肝を発生した.92%以上膵切除に70%肝切除を併施すると,8頭中5頭(62.5%)では膵島からのインスリン分泌は良好に維持され,肝におけるインスリン摂取率は低下し,末梢血中インスリン値は良好に保たれて,糖尿病の発現はみられず,高脂血症や脂肪肝の発生も認められなかった.以上,肝膵同時大量切除後の糖質及び脂質代謝は膵単独切除に比し良好に維持されるが,これは肝切除の併施により膵島からのインスリン分泌が良好に維持され,かつ肝でのインスリン摂取率が低下して末梢血中インスリン値が良好に維持されるためと考えられた.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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