肝臓
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合成女性ホルモンによる肝発癌の実験的研究
特に肝細胞癌の発生並びに進展様式と生物学的特性
谷川 寛自
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1989 年 30 巻 9 号 p. 985-994

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抄録

経口避妊薬の配合に合せて合成女性ホルモンをラットの胃内に投与し,肝癌の発生とその発育進展様式並びに生物学的特性について検討した.生後4週齢Wistar/JCL雌性ラットにethynylestradiol 0.15mg+norethindrone acetate 12mg(Pill)を1日1回18ヵ月間連日強制的に胃内に投与し,12ヵ月目以降は1ヵ月毎に開腹して肝病変の推移を観察した.Pill投与12ヵ月目で全例に肝過形成結節の発生を認め,さらに21.3%に肝細胞癌の発生を認めた.その後,発癌率は14ヵ月目51.1%,16ヵ月目63.8%,18ヵ月目74.5%と次第に増加した.多発例も13ヵ月目より出現し,18ヵ月目には80.0%になった.一方,腫瘍占拠率は18ヵ月目には全肝の78.5±10.2%に達した.また,本腫瘍のdoubling timeは139.5±127.1日であり,細胞核のDNAhistogramにおいてもpolyploidy, aneuploidyの出現を認め,悪性像を示した.一方,本腫瘍の80%はestrogen receptorが陽性であり,また同系ラットにはPill投与下でのみ移植可能であるなど,高いホルモン依存性を示した.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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