1990 年 31 巻 12 号 p. 1458-1463
症例は44歳の男性.人間ドックの超音波検査で胆嚢部異常を指摘され当院受診.理学所見,肝機能検査,睡瘍マーカーなどは正常.超音波検査で肝床部に5×3cm大の嚢胞がみられ,内部に高エコーの腫瘍様病変を認めた.CT検査では不均一なlow densityを,ERCでは胆嚢頸部の圧排像を認め,血管撮影では異常を認めなかった.経皮的嚢胞穿刺で極めて粘稠な粘液を得,造影剤注入前後の超音波検査で腫瘍様病変の移動を確認し,同病変が粘液によるものと判定しえた.しかし造影所見で,卵円形の内腔に小陰影欠損を認め,小腫瘍の存在を否定しえず,拡大胆嚢切除術を施行した.嚢胞は単房性で腫瘤はなく,多列繊毛上皮と平滑筋層を有し,肝繊毛上皮嚢胞と診断した.本症は欧米では現在までに20例前後,本邦では最近10年間に5例しか報告されておらず,稀な疾患と考え報告した.