肝臓
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肝細胞癌の組織学的分化度判定の客観化についての基礎的研究
高井 智子
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1993 年 34 巻 2 号 p. 130-140

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抄録

肝細胞癌(HCC) 27症例の癌部86部位,非癌部44部位,正常肝など対照肝13部位,計143部位について,蛍光顕微測光学的に核DNA量を測定し,そのploidy patternを,Dp, Tp及びApの3型に大別した.非癌部及び高分化型HCCは全例がDpを,中分化型HCCはDp,Tp及びApの3パターンを,低分化型HCCは全例がApを示した.そこで,ploidy pattern以外に核DNA量に関する7つのパラメーターを設定し,HCCの組織学的分化度の客観的判別における有用性を統計学的に検討した.その結果,多倍体細胞の出現頻度を示すパラメーターの一つである6n≦%が有用であることが示されたが,その正診率は87%にとどまった.また,核DNA量とPCNAによる細胞増殖能や画像解析による細胞学的形態との相関性を検討したが,HCCの分化度判定に有用な指標は得られなかった.以上から,核DNA量の測定によるHCCの組織学的分化度判定法は効率が悪く,有用な方法でないと考えた.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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