自己免疫性肝炎の急性発症例で著明なlow T
3症候群を来した1例を経験した.症例は70歳の女性.全身倦怠感,食欲不振,皮膚黄染にて近医を受診.血清GOT 85IU/l, GPT 59IU/l, 1カ月後にはGOT 1,405IU/k, GPT 839IU/lと上昇したため,当院を紹介され入院した.血沈の亢進(34mm/hr), IgGの増加(4,246mg/dl)あり,HA-IgM抗体,HBs抗原および第2世代HCV抗体陰性,抗核抗体陽性で,自己免疫性肝炎と診断,肝生検ではbridgingnecrosisを認めた.またF-T
3が低値(1.36pg/ml)を示したが,F-T
4とTSHは正常値で,lowT
3症候群の合併と診断した.Prednisolone 40mg/日より投与開始したところ,肝障害は速やかに軽快したが,経過中にF-T
3は0.5pg/mlの測定感度以下(RIA法)となる著明なlow T
3症候群を来した.本症例では,すでにlow T
3症候群を来しているところに,さらにステロイド投与によってF-T
3の低下が一層助長され,その結果F-T
3が測定感度以下となる程の低下を来したと考えられれた.過去,測定感度以下となるような著明なlow T
3症候群を来した報告はなく,またこれらの現象は,肝臓と甲状腺ホルモンの関係を考える上で興味ある1例と思われ報告する.
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