1994 年 35 巻 12 号 p. 870-875
臓器移植の際に有用な免疫抑制剤であるGyclosporin A (CsA)を重症型肝炎5例に対し投与し,その臨床効果について検討した.対象は,他の治療に対して抵抗性と考えられたB型慢性肝炎急性増悪3例,自己免疫性肝炎の劇症化1例,アルコール性肝炎1例の計5例でありいずれの症例もその経過中にProthrombin time (PT)が40%以下で,高ビリルビン血症と腹水を伴っていた.5例中,肝予備能が比較的良好な時期よりCsAを投与した3例が生存し,生存例においてはCsA投与直後より血中総ビリルビン値は速やかに低下し,他の肝機能も正常化した.重症型肝炎に対して肝予備能の良好な早期にCsAを投与することは肝障害の進展を抑制すると考えられた.