肝臓
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下腸間膜静脈-下大静脈短絡による肝性脳症を契機に
診断された82歳の原発性胆汁性肝硬変症例
今村 真紀子深見 公一都留 正展深沢 俊男沢辺 元司
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1995 年 36 巻 10 号 p. 594-600

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抄録

症例は82歳女性.過去に黄疸や掻痒の既往はない.1991年4月,意識障害出現し精査のため当センター入院.血液検査では,肝胆道系酵素が上昇し,IgM高値,抗ミトコンドリア抗体陽性で,肝生検組織像は原発性胆汁性肝硬変症(PBC)に矛盾しない所見(Scheuer, stage 3)であり,PBCと診断した.また,意識障害の原因は,血中NH3, ICG R15が高値で,腹部血管造影にて下腸間膜静脈-下大静脈短絡を認め,NH3値は短絡路で異常高値,下大静脈の短絡路流入前後で増加を認めたことより,PBCに伴った門脈大循環短絡による肝性脳症と診断した.
本症例は肝性脳症を初発症状とした前硬変期のPBC例であり,PBCでは門脈圧亢進症状が早期に出現する場合のあることを示す症例と考えられた.また,本症例は肝性脳症を初発症状とするPBC症例報告の中で,最高齢であった.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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