肝臓
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肝動脈塞栓療法(TAE)後に生じたhepatic bilomaの2症例
松尾 功生野 信弘大曲 勝久小松 浩平村瀬 邦彦牧山 和也原 耕平田中 公朗兼松 隆之
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1995 年 36 巻 10 号 p. 608-614

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抄録

肝細胞癌に対して肝動脈塞栓療法(TAE)を施行した2症例において,胆道系酵素の上昇に続いて,ともに約60日後に肝内胆管の拡張を認めた.1例目では,肝左葉の腫瘍と著明な肝内胆管拡張に対して尾状葉部分切除を伴う肝左葉切除を施行した.術後の病理学的検討で,肝動脈周囲から胆管に及ぶ虚血性変化と線維化,破壊された胆管から漏出した胆汁による広範なbile lakeの形成があり,TAEによる肝内胆汁嚢胞(hepatic biloma)と考えた.2例目は,自覚症状や炎症反応が軽微であったことから経過観察とした.TAE後のhepatic bilomaには,文献上早期発症群と遅発発症群があるが,胆管周囲血管叢およびより近位の肝動脈の閉塞,らに同時に注入される抗癌剤が,本症の発症に関与している可能性がある.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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