肝臓
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小柴胡湯により肝および腎障害を来した慢性C型肝炎の1例
阪井 貴久国吉 幹夫中村 昌嗣中野 赳為田 靱彦小坂 義種
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1995 年 36 巻 12 号 p. 712-718

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抄録

小柴胡湯により肝障害と腎障害が惹起された60歳のC型慢性肝炎患者を経験したので報告する.患者は1993年,肝生検にて慢性活動性肝炎と診断され,小柴胡湯の投与の下に経過観察されていたが,黄疸を伴う肝機能検査値の増悪と腎障害をきたした2回の入院歴がある.1994年9月,一時中止していた小柴胡湯の服薬を再開したところ,服薬の翌日より発熱,全身倦怠感をきたし入院した.入院時検査所見ではALT 308IU/l, AST 314IU/l, T-Bil 2.8mg/dlと肝障害とCreat. 1.80mg/dlの腎障害を認めた.過去の2回の入院前にも小柴胡湯の服用歴があり,同薬剤による肝・腎障害を疑い服用を中止したところ検査所見の速やかな改善を認めた.小柴胡湯に対するLSTは陰性であったが,その組成成分であるニンジン,ハンゲ,オウゴン,タイソウに対しては陽性であり,本例の肝および腎障害は小柴胡湯により惹起されたものと診断した.本剤による肝障害の報告は散見されるが,腎障害を伴った報告はなく興味ある症例と考えられた.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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