1996 年 37 巻 10 号 p. 549-555
本邦では比較的稀な健常成人に発症したサイトメガロウイルス(CMV)肝炎6症例を経験したので,それらの臨床病理学的特徴につき検討し,さらにEBウイルス(EBV)肝炎と比較検討した.CMV肝炎発症患者は,若年男性に多く,発症時期は夏から秋に多かった.CMV肝炎の臨床像は,発熱等の感冒様症状,肝脾腫がしばしばみられ,血清トランスアミナーゼの上昇は軽度であった.
CMV肝炎とEBV肝炎の比較では,CMV肝炎発症年齢はEBV肝炎発症年齢に比べて有意に高齢であった.血清GPT値はCMV肝炎の方が,EBV肝炎に比べて有意に低値であった.CMV肝炎2症例の肝組織像では,核内封入体はみられず,門脈域及び類洞内への単核球の浸潤,肝細胞壊死,胆管障害の所見を認めた.