1996 年 37 巻 3 号 p. 170-175
慢性肝疾患患者に頭部MRI検査を施行した.慢性肝炎患者では変化を認めなかったが,肝硬変患者では59.2%にbasal gangliaに左右対称性の信号強度の増強が観察された.この所見は血清のFischer比の低下,チロジン,フェニールアラニン,ヒアルロン酸濃度の上昇,プロトロンビン時間の延長,血小板数の低下と有意に関連した.有所見群の34例の経過観察中,6例に顕在性肝性脳症が発現したが無所見群からは認められなかった.以上の成績より肝硬変患者における頭部MRIでの大脳基底核部位の信号強度の増強は進行した慢性肝機能障害時に出現し,潜在性肝性脳症の早期診断の指標となりえる可能性が示されたが,経口分枝鎖アミノ酸製剤の長期投与によってもこの異常所見の改善は認められなかった.