肝臓
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成人に発症した肝間葉性過誤腫の1切除例
安藤 達也岡本 英三山中 若樹折山 毅古川 一隆田中 恒雄市川 信隆田中 渉安井 智明黒田 暢一北山 佳弘今北 正道岡田 敏弘高屋 豊
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1996 年 37 巻 3 号 p. 182-186

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抄録

我々は,検診にてCA19-9の軽度上昇を指摘され,超音波にて偶然発見された成人の肝間葉性過誤腫を経験したので報告する.症例は47歳の女性である.超音波やCTにて肝のS6より肝外性に発育する大きさ7cmの腫瘍を認め,腫瘍は充実性の部分と嚢胞性の部分にて構成されていた.血管造影では腫瘍全体に濃染像が見られた,良性腫瘍を最も疑ったが,悪性腫瘍も否定できず手術を施行した.切除標本では大きさ7.5cm×7.5cmの境界明瞭で光沢のある充実性腫瘍で,内部に大小の嚢胞を認めた.組織像では主に豊富な線維結合織よりなり,その間に大小の血管あるいはリンパ管や,小胆管の増生を認めた.現在,術後3年であるが,再発兆候はない.肝間葉性過誤腫の本邦報告例は64例であり,このうち15歳以下の小児例が52例と大部分を占め,成人例はわずか12例に過ぎない.小児例では腫瘍の発育速度は早く,成人例では発育速度は緩慢であるも悪性腫瘍との鑑別も困難で,共に切除が第一選択の治療である.悪性化や転移例はなく予後良好であるが,3例の再発例があり注意を要する.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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