1997 年 38 巻 4 号 p. 232-237
肝細胞癌 (以下, 肝癌) 破裂例に対する切除成績と再発形式を分析した. 対象は肝癌破裂9例のうち肝切除術を施行した8例で, 全て男性, 平均年齢は54.2歳, B型肝炎ウイルス陽性が5例, 肝硬変の併存を4例にみとめた. 緊急手術は2例, 待機手術が6例であり, 7例に肉眼的治癒切除を行ない得た. 平均腫瘍径は6.8cm, 門脈侵襲と肝内転移陽性がそれぞれ4例と7例であり, 3例に腫瘍を被覆した組織内に癌細胞を認めた. 術死はなく, 50%生存期間は19.0カ月, 3年以上生存は4例であった. 肉眼的治癒切除7例中1例は113カ月間無再発生存中で, 他の6例は平均10.3カ月で再発し初回再発部位は肝内と腹膜がそれぞれ, 3例ずつであった. 非治癒切除の1例を含めて腹膜播種巣はいずれも膨脹性に発育しており, 切除し得た. 癌転移抑制遺伝子nm23-H1遺伝子の発現は陽性4例, 陰性3例で陰性の全例が腹膜播種性転移をきたした.