肝臓
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慢性肝炎を併存する肝細胞癌切除後の再発様式と多中心性発癌
前場 隆志森 誠治濱本 勲岡田 節雄若林 久男前田 肇
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1997 年 38 巻 9 号 p. 541-546

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抄録

慢性肝炎 (CH) 併存肝細胞癌36切除例の再発様式を検討し, CHと異時性多中心性発癌の関連性と肝切除の意義を考察した. 対象の61%が組織学的stage III, IV-A進行癌であり, 術後9年目の1例以外は全て3年以内に再発した. 異時性多中心性再発の条件を, (1) 初発巣が早期肝細胞癌で絶対治癒切除が得られた例, (2) 初発巣に浸潤像のない術後3年以降単発再発例, (3) 術後5年以降再発例, (4) 再発再肝切除病巣に高分化型組織像が存在する例とすると, 異時性多中心性発癌例は術後9年目再発の1例 (肝硬変進展例) のみであった. 累積5年再発率・生存率はそれぞれ37.7%・70.8%と良好な成績であり, この理由は対象の64%に葉単位以上の広範肝切除を適用したこと, 異時性多中心性再発例が1例に過ぎなかったことの2点が考えられた. CH併存例は単中心性に発生する可能性が強く, とくに径30mmを越える肝癌では広範肝切除による根治性の追及で良好な遠隔成績が得られている.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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