肝臓
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胆管炎を契機に発見された先天性肝線維症の1例
Caroli病非合併例
伊藤 雄介伊藤 和幸物江 孝司田中 明隆祖父江 雅至松井 泰道近藤 豊東 克謙伊藤 誠
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1997 年 38 巻 9 号 p. 564-569

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抄録

症例は63歳, 女性で, 両親が従兄婚. 1995年8月黄疸, 心窩部痛を主訴として入院. 入院時血液生化学検査では炎症所見, 肝・胆道系酵素, ビリルビン値の上昇を認めた. 腹部超音波検査, 腹部CTでは肝内・外胆管の広狭不整を伴った軽度拡張および肝内に多発性小 胞性病変を認めた. 臨床的に胆管炎と診断, 保存的治療により自・他覚症状とも改善した. 内視鏡的胆管造影では肝外胆管は軽度拡張し, 肝内胆管は枯れ枝状で, 広狭不整であった. 腹腔鏡検査では肝表面に比較的幅の広い白色紋理がびまん性にみられた. 肝組織所見は門脈域の著明な線維化, 小葉間胆管の増生, 拡張を示し, 先天性肝線維症 (CHF) と診断した. CHFは門脈圧亢進症状を示す例が多く, 一方, CHFを合併することが多いCaroli病では胆管炎症状を呈する頻度が高いとされている. 本症例は胆管炎症状を初発症状としたCaroli病非合併例のCHFであり, 極めて稀な症例と考えられる.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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