1999 年 40 巻 3 号 p. 146-149
症例は17歳, 女性. 既往歴, 家族歴に特記すべきことなし. 1997年1月下旬より咽頭痛, 38℃台の発熱が続き, 肝障害, 腹部エコーにて肝及び脾に多発性の腫瘤性病変を認めたため精査目的にて入院. 入院時に著明な肝脾腫を認めた. 末梢血像は正常であったが, 肝腫瘍生検にて著明な小円形細胞の腫瘍性増殖を認めた. 骨髄穿刺にてリンパ球表面マーカーはCD10, CD19, CD20, CD34陽性でありALL (L1) に合致した所見であった. その後末梢血中に腫瘍細胞が出現し, 化学療法にて肝腫瘤像の著明な改善を認めた. 白血病細胞は高頻度に肝に浸潤するが, 重症肝障害を来すことは稀とされる. 本例は入院時に肝障害を認め, 診断時において末梢血像に腫瘍細胞の出現なく, 多発性の肝腫瘤を契機にALLの診断に至った. 白血病においては一般的に肝生検などによる診断は禁忌な場合が多いとされるが, 早期に肝生検を施行し診断できた貴重な症例と思われ報告した.