肝臓
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肝細胞癌を合併したHCVおよびHBV陰性の晩発性皮膚ポルフィリン症の1例
翁長 由紀子宇都 浩文永田 賢治翁長 正明駒田 直人堀 剛弘野 修一林 克裕黒木 和男坪内 博仁
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1999 年 40 巻 6 号 p. 361-365

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抄録

症例は65歳, 男性. 常習飲酒家. 15年前より露光部に色素沈着があり, 創傷が治癒しにくかった. 1995年9月, 肝内腫瘤を指摘され, 当科に入院. 日光曝露部に色素沈着を認め, 血液生化学検査では血清トランスアミナーゼの軽度上昇, 血清鉄とフェリチンの高値がみられた. 尿中ウロポルフィリンは著増し, 尿中ポルフィリン前駆体および血中・便中ポルフィリンは正常範囲内で, HBVおよびHCV関連マーカーはすべて陰性であった. 腹部USTで右葉に充実性腫瘤を認め, 同部位からの狙撃生検像は高分化型の肝細胞癌 (HCC) の所見であった. 非癌部の組織像は肝硬変の所見で, 肝細胞内には針状結晶が存在した. 肝組織中のHBV-DNA (PCR法) およびHCV-RNA (RT-PCR法) は陰性であった. 以上の検査結果より, HCCを合併した晩発性皮膚ポルフィリン症 (porphyria cutanea tarda; PCT) と診断した. HBVおよびHCVが関与していないPCTにおけるHCC合併例はこれまで本邦では報告されていないので, PCTにおける肝発癌について文献的考察を加え報告する.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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