2000 年 41 巻 10 号 p. 727-735
自己免疫性肝炎 (AIH) に肝細胞癌 (HCC) を合併した2例 (ともに女性) を経験した. 症例1は62歳時肝機能障害を指摘. 原発性胆汁性肝硬変疑いにてウルソデオキシコール酸を投与されたが無効. 73歳時後下区に径1.5cm大のHCC出現. 肝動脈塞栓術を施行するも肝内多発転移を来し, 約8カ月目に腹腔内破裂のため死亡. 剖検所見 (慢性活動性肝炎: A2, F3) を加えたAIH scoreは17点で, AIHと最終診断した. 症例2は64歳時肝機能障害を指摘. AIHが疑われプレドニゾロン内服で不完全寛解したが, 肝生検では肝硬変 (A3, F3-4) であった (現行score 17点). 71歳時外側区に径2cm大のHCC出現. 肝動脈塞栓術が有効であったが, 腎不全のため約1年10カ月目に死亡. 両症例において抗核抗体価の上昇ないし陽転化がHCCの進展に並行していたことから, 自己免疫反応がHCC発症に関与する可能性が示唆された.