症例は門脈血栓を伴う肝線維性多嚢胞性疾患 (先天性肝線維症と胆管炎を伴わないCaroli病との合併) の68歳, 男性である. 死亡の約2年半前になって初めて食道静脈瘤などの門脈圧亢進症状, 高度の肝不全症状および著しい肝萎縮が出現した. 肝不全症状および肝萎縮は肝線維性多嚢胞性疾患にはほとんどみられないことから, これらは門脈本幹から右枝および左枝にかけて形成された血栓と密接に関係しているものと考えられる. すなわち, 形成された門脈血栓が門脈循環障害を増悪させ, 肝不全および肝萎縮を惹起したものと推測される.