肝臓
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HBs抗原陽性初発肝細胞癌患者から得られた定期観察の現状と問題点について
黒松 亮子田中 正俊島内 義弘緒方 理子井出 達也神代 龍吉真島 康雄佐田 通夫
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2001 年 42 巻 3 号 p. 126-132

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抄録

早期診断が可能となったにも拘わらず, HBs抗原陽性の肝細胞癌では, 進行癌の状態で診断される例も少なくない. この理由を明らかにするため, HBs抗原陽性の肝細胞癌患者90例を対象に, 初発の肝細胞癌が診断されるまでの定期観察の有無と, 観察の有無による予後を検討した. 定期観察を受けていなかった33例は定期観察を受けていた57例に比べ, 発見時の腫瘍径は大きく (71mm vs 25mm), 予後が悪かった (1年, 5年生存率; 53%, 10% vs 80%, 39%). 定期観察を受けていなかった33例のうち19例は, 肝疾患を指摘されたにも拘わらず放置していた. 33例中11例は, B型肝炎ウイルス関連の肝疾患の家族歴を有していた. これらの症例は肝細胞癌診断以前から定期的な観察が可能であったと考えられた. 以上の結果から, HBs抗原陽性者に発生する肝細胞癌の早期発見には, 長期にわたる定期的な経過観察が必要であり, 極めて重要であることを, 我々は再認識する必要がある.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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