肝臓
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NASH (非アルコール性脂肪性肝炎) による肝硬変に多中心性発生したと考えられる肝細胞癌の1剖検例
田口 順石井 邦英梶原 雅彦井上 欣哉古賀 裕之實藤 俊昭安倍 弘彦中島 収神代 正道佐田 通夫
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2003 年 44 巻 11 号 p. 559-564

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抄録
症例はBMI; 30.3と肥満を有する59歳の女性. B型およびC型肝炎ウイルスマーカーは陰性で, 2年前より原因不明の肝硬変で当科外来加療中であったが, 全身倦怠感が強くなり入院となった. 腹部超音波, CT検査で著明な肝萎縮と腹水を認めた. 入院1カ月後に肝不全および腎不全により死亡し, 病理解剖を施行した. 組織学的検索の結果, 肝細胞の著明な脂肪化, 風船様膨化, マロリー体および好中球を含む炎症細胞浸潤などアルコール性肝炎に類似した所見を認めた. 肝炎ウイルスマーカー陰性, 飲酒歴がなく肥満をみることより, 非アルコール性脂肪性肝炎 (NASH) による肝硬変と診断した. また, S8に9×8mm, S4に5×4mmの2個の微小結節を認め, S8の結節は硬化型中分化型肝細胞癌で腫瘍の辺縁は高分化型を呈していた. S4の結節は全体が細索状構造をなす高分化型肝細胞癌であった. 本症例はNASHによる発癌を考えるうえで示唆に富む症例と考えられた.
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© 社団法人 日本肝臓学会
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