肝臓
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非アルコール性脂肪性肝炎を背景に肝細胞癌を発症した1例
高田 弘一加藤 淳二高橋 稔石渡 裕俊住吉 徹哉高橋 祥宮西 浩嗣黒岩 巌志高梨 訓博佐藤 康裕中村 とき子佐藤 勉佐藤 康史瀧本 理修高山 哲治平山 眞章近江 直仁新津 洋司郎
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2003 年 44 巻 12 号 p. 663-668

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抄録

症例は69歳, 女性. 平成9年より非アルコール性脂肪性肝炎 (NASH) に起因する肝硬変と診断され他医にて経過観察されていた. 平成14年1月, 腹部エコーおよびCT検査にて肝S6に径30mm大の腫瘤性病変を指摘され, 当科に紹介入院となった. B型およびC型肝炎ウイルスマーカーは陰性であった. AFPおよびPIVKA-IIが上昇しており, 各種画像診断上, 肝細胞癌 (HCC) が強く疑われ, 肝生検の結果, 中~低分化型HCCと診断された. また, HCC組織において, 酸化的DNA障害の指標である8-hydroxy-2'-deoxyguanosine (8-OHdG) を免疫組織学的に染色したところ, 背景肝細胞に加えて癌細胞の核が陽性に染色された. 近年, NASHにおけるHCC合併例の報告が増加してきているが, その肝発癌機序は不明である. 本症例では, NASHに伴って起こる持続炎症に起因する酸化ストレスが, HCC発症に関わっている可能性が示唆された.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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