症例は43歳, 女性で中国製やせ薬の糸干之素月交嚢 (センノモトコウノウ) を約20日間服用した後に, 軽度の黄疸を伴う肝炎を発症した. 自己免疫性肝炎や肝炎ウイルスは諸検査上, 否定的であった. 血清総ビリルビン最高値は4.0mg/dl, AST最高値は899U/l, ALT最高値は1664U/lでプロトロンビン時間の延長はなかった. 保存的療法で黄疸は速やかに消失したが, 血清ALTは正常化に3カ月を要した. 肝生検では肝細胞の巣状壊死, 門脈域へのリンパ球浸潤, 類洞壁細胞の活性化を見た. 同薬物のリンパ球幼弱化反応は陰性で薬剤アレルギーを示唆する皮疹, 好酸球増多はなかった. チトクロームP450 2C 19遺伝子型は*2/*3で poor metabolizer に相当していた. 同薬物を購入した4人中1人だけが肝炎を起こしたことから, この薬による肝障害の発生機序には個人差があると思われた.