抄録
いや地対策として選抜され,台木としての利用が普及しつつあるイチジク‘Zidi’や‘King’について,イチジク株枯病抵抗性の強度を明らかにするため,抵抗性が強いとされる‘Celeste’と,抵抗性が弱く本病の被害が問題になっている主要品種‘桝井ドーフィン’との間で抵抗性の比較を行った。1. 予めPDA培地で前培養し,培地ごと直径5mmに打ち抜いた株枯病菌Ceratocystis fimbriata の菌そうを直径8cmに切った供試品種の葉片に付傷接種した。その結果,接種部位からの病斑の広がりは‘Celeste’で遅く,‘King’や‘桝井ドーフィン’で速く,‘Zidi’はその中間にあった。2. 予めPDA培地で培養したC. fimbriata の菌そうを,培地ごとミキサーで粉砕して蒸留水に懸濁し,供試ポット苗の用土にかん注接種した。その結果,何れの品種においても病斑が形成され,C. fimbriata が再分離された。但し,‘Celeste’は接種後90日間ほとんど枯れなかったのに対し,‘Zidi’や‘King’は‘桝井ドーフィン’と同様に62%~89%の苗が枯死した。以上の結果から,いや地対策の台木として開発されたイチジク品種のイチジク株枯病抵抗性は,明らかに‘Celeste’より弱く,これらの台木を使った栽培においても,本病に対する注意が必要と考えられた。