2016 年 58 巻 p. 65-72
2013年から2015年に静岡県中遠地域の現地トマト養液栽培施設3か所において,タバコカスミカメ放飼とバンカー植物の併用によるタバココナジラミ防除効果およびタバコカスミカメ温存効果を検討した。その結果,タバコカスミカメ放飼区ではトマト上において本種の定着と増殖が認められ,栽培終期に本種密度が上昇するとタバココナジラミ密度は低下した。また,選択性薬剤を併用することでトマト黄化葉巻病発病株率は慣行防除を行った対照区と同等以下であった。さらに,バンカー植物として設置したバーベナ‘タピアン’上では,試験期間を通してタバコカスミカメの定着が確認され,温存効果が認められた。タバコカスミカメの加害によるトマトへの経済的な被害は確認されなかった。以上のことから,施設トマトにおけるタバコカスミカメ放飼とバンカー植物の併用は,タバココナジラミ防除および栽培終了時における施設外へのトマト黄化葉巻ウイルス(TYLCV)拡散防止対策の一部として有効であると考えられた。