関西病虫害研究会報
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原著論文
mRNA-Seqによる奈良県内の主要品目からのウイルス・ウイロイドの網羅的検出とその実用性評価
浅野 峻介芳田 侃大平山 喜彦
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2020 年 62 巻 p. 39-45

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抄録

病原体の同定のためのウイルス・ウイロイド検定には,特異的プライマーを用いたRT-PCRが主に使用されているが,想定外の種や新系統のウイルス・ウイロイドが感染していた場合には,検出することはできない。そのため,messenger RNA sequencing(mRNA-Seq)を利用した網羅的にウイルス・ウイロイドを検出する手法の活用が期待されている。本報告ではmRNA-Seqを用いて,奈良県内圃場で採取したRNAウイルス,DNAウイルス及びウイロイドの網羅的検出を試み,その中でRNA抽出およびデータ解析手法について検討を行った。

RNA抽出バッファーへのキク植物体の投入量を減少させることで,RNAの収量および品質が向上した。mRNA-Seqにより検出されたリードの数およびゲノムのカバー率を判断基準とすることで,RNAウイルスであるCMV,TSWV,ウイロイドであるCSVd,CChMVdを検出できた一方でDNAウイルスであるDMV,TYLCVは検出されなかった。さらにBLAST検索で抽出されたリードの相同性と相同性部位の長さが,ウイルス・ウイロイド感染の有無を判別する重要な情報になることが示唆された。これらの結果からmRNA-Seqを用いることで網羅的にRNAウイルス及びウイロイドを検出できることが示された。

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