2024 年 66 巻 p. 37-45
愛知県内のトマト,イチゴ等から2021年から2022年に採取した灰色かび病菌54菌株に対し,QoI剤・SDHI剤等を含む殺菌剤16剤について,インゲンマメ初生葉を用いた感受性検定を行った。生物検定の結果,QoI剤のアゾキシストロビンの耐性菌株数は22菌株(41%)で,ピリベンカルブは17菌株(31%)であった。SDHI剤は,ペンチオピラドが3菌株(6%),イソフェタミドが2菌株(4%),ピラジフルミドで同じく2菌株(4%)が耐性菌であった。QoI剤とSDHI剤の混合剤であるピラクロストロビン・ボスカリドは23菌株(43%)と最も耐性菌株の割合が高かった。このほか,ジエトフェンカルブ・チオファネートメチルで8菌株(15%)が耐性菌であることが判明した。また,病斑形成抑制率を用いた相関解析(スピアマンのρ)の結果,QoI剤ではピラクロストロビン・ボスカリドはアゾキシストロビン(ρ=0.68)とピリベンカルブ(ρ=0.62)と相関があった。SDHI剤ではペンチオピラドとイソフェタミド(ρ=0.5)で相関があった。これらにより,同一系統間の薬剤間において,本県での交叉耐性の発生が示唆された。