2025 年 67 巻 p. 1-9
静岡県内の有機栽培茶園ではチャ炭疽病による被害が問題となっており,有機栽培で利用できる効果的な防除技術の開発が求められている。そこで,有機栽培茶園における病害虫防除を目的とした「茶園用病害虫クリーナー」(以下,クリーナーと略)を開発した。本機は,茶樹冠中の炭疽病葉を,送風により一定程度除去でき,送風と同時に銅殺菌剤等の薬液を散布することもできる。本研究では,静岡県農林技術研究所茶業研究センター内の茶園(静岡県菊川市)において,炭疽病防除に効果的なクリーナーの処理時期を検討した。各茶期の萌芽前または萌芽期にクリーナーを処理した区(銅剤同時処理なし)では,二番茶摘採前および三番茶期における炭疽病の防除価が42.9~53.4となり,発病葉数が無処理区と比べほぼ半減した。摘採前におけるクリーナー処理の追加または銅剤同時処理の有無による発病葉数の差異は認められなかった。次に,静岡県内2地域の現地の有機栽培茶園において,クリーナーによる炭疽病防除効果を評価した。静岡県島田市川根町の有機栽培茶園において,各茶期萌芽期と秋冬番茶摘採前にクリーナーを処理した区(銅剤同時処理なし)では,クリーナー無処理区と比べ炭疽病の発病葉数が減少し,防除価は32.3~47.0であった。静岡県沼津市の有機栽培茶園において,剪枝後の秋芽萌芽期と秋冬番茶摘採前にクリーナーを処理した区(銅剤同時処理なし)においても,クリーナー無処理区と比べ炭疽病の発病葉数が減少し,防除価は53.1~83.3であった。本研究より,クリーナーの処理により炭疽病の発生を抑制できることが明らかとなり,本機は有機栽培茶園における炭疽病防除に活用できると考えられた。