2025 年 67 巻 p. 81-86
外来種アカハネオンブバッタAtractomorpha sinensis(以下,アカハネ)の農作物への影響を評価するための調査・実験を在来種のオンブバッタA. lata(以下,オンブ)と比較しながら行った。両種の季節消長を大阪府南部の野外で比較した結果,アカハネは初夏と秋季の年2回,オンブは秋季に1回の成虫のピークが認められた。2017,2022,2024年に行った大阪府南部7か所の定点調査の結果,アカハネの分布は低標高地から高標高地へ拡大する傾向が認められ,アカハネ侵入地では数年後にオンブに代わって優占していた。アカハネの飛翔力はこれまで知られていたよりもはるかに大きく,移動分散に有利であると考えられた。交配実験の結果,オンブとの種間交尾やマウンティングなどの繁殖干渉が認められ,秋季に両種の世代が重なることから,在来のオンブの衰退に関連している可能性が考えられた。以上の様な本研究の結果から,従来オンブのみの生息地においてもアカハネの拡大,置き換わりが生じ,秋にはアカハネの密度が増加するため,これまで被害の無かった作物にも害を生じる可能性が高いと考えられた。