関西病虫害研究会報
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稲の生育相と発病との関係について
岩瀬 茂基都築 仁
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1958 年 1 巻 p. 15-22

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抄録

1 稲紋枯病の発生と稲の生育相との関係を明らかにし, 本病に対する水稲の感受性の増大する時期を把握しようとして試験を行つた.
2 生育相の異る水稲の圃場における初発生は温度 (気温及水温) と関係があり, 挿秧時期の遅くなるに従い挿秧より発病までの期間が短縮される.
3 初発後の病勢進展は何れの挿秧時期の水稲においても幼穂形成期までは徐々であり, それ以後急激に進展する. 特に早期栽培稲では生殖成長期の病勢進度が急激である.
4 生育相の異る水稲に人工接種を行つた結果は, 生育相の進んでいるものほど感染並びに病勢進度が急激である.
5 生育相の同じ水稲に時期別に接種を行つた結果は, 接種時期が変つても病勢の進度には生育時期的の変化は認められず, 黄熟期には同じ程度の罹病度となつた.
6 日長処理により人為的に生育相を変えた水稲の本病に対する感染並びに病勢の進度は, 短日処理を行つて生育を促進させた水稲では増大し, 又長日処理によつて生育を遅らせた水稲では鈍くなる.
7 水稲の栄養成長期と生殖成長期とでは環境的要素以外に本病に対する感受性に差異があり, 前者より後者の方が本病に対してより感受的であり, 生殖成長期においても穂孕期以後に感受性は増加している. そのため早期栽培稲では, 本病菌の繁殖に必要な環境的諸条件の好適となる時期が水稲自体の感受性の増大する時期と合致するために病勢の進展は急激であり, 被害は増大するものと考えられる.

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